まあ、それはさておき、夏の旅で屋久島に行きそびれた私。 台風のせいで、種子島からは隣の屋久島の「や」の字も見えなかった。 (地図を見ていただければ、お分かりいただけると思うが、 屋久島と種子島は、まさに「お隣さん」なのだ。) 近いから、本来見えるはずなのに。 口惜しかった。
すぐそばに・・・目の前に屋久島があるのに行けない。 あれほど憧れ続けた島だったのに。 行くつもりで来たのに行けないとなると、まるで目の前でおあずけくらったような気になり、余計に行きたくなるから始末が悪い。
その時は、中途半端な旅に終わり、そのまま東京に帰るはめになってしまった。 どうにも収まりきれぬ私は、その年の年末に再度、屋久島行きを決めた。 あのままじゃ、どうも心の健康にも悪かったし(笑)。
ふふ・・・冬なら台風も来るまい。 大雪で飛行機が飛ばないなんてことも、ここならあるまい。 (もっとも、屋久島の山々には、冬はちゃんと雪が降るという) ・・・そんな気持ちがあったからだ。
夏に屋久島に辿り着けずに引き返して来た時以来、どうもモヤモヤしていたから、 今度こそ辿り着けると分かった時は、嬉しかった。 始めて見るその島の姿に胸が高鳴った。
私を乗せた飛行機は下降を始めた。窓には島の姿が斜めに映し出される。 島の景色が見る見る近付き、やがて等身大で感じられる程にリアルになってくる。 さあ、ついに屋久島に到着だ!

▲栗生付近の屋久島 ©
屋久島写真館>>
洋上アルプスとも呼ばれる、島の山々が実に美しい。 神々しさがある・・とでも言ったらいいのだろうか。 高さといい、色といい、山姿に品を感じる。 この島は雨が多く、湿気が高いと聞いていた。
だが、その日の快適さはどうだ! 年末だというのに、あまり寒く無いし、空は青空! 旅人を包む風も心地よい。「はるばる、ようこそ」と囁いてくれてるかのようだ。 夏に来れなかった分だけ、屋久島の神様が私にお詫びしてくれてるような気分だった。
小さな空港を出ると目の前は駐車場で、レンタカー屋さんの姿がポツポツ。 さっそく1台の車を借りて、いざ島の外周巡りに出発。 東京とはワケが違う。 道がすいている。窓を開ける。風を肌で感じる。空が気持ちよく広く、高い。 音楽もラジオもいらない。島の自然そのものが音楽であり、そこには詩がある。 こんな贅沢な運転環境は、そうは無い。 運転は実に快適。
やがて、車は白谷雲水峡に着いた。 駐車場からは、遠くに海が見える。そう、ここは島の内部に入った所なのだ。 ここは、あまり奥まで探索する時間はなかったが、 心にイメージしていた「屋久島らしさ」が随所に見られ、嬉しくなる。 期待にちゃんと応えてくれる。 屋久島らしい大杉が来訪者を迎えてくれる。

▲白谷雲水峡
歩いていると、体の奥底まで緑を浴びる・・そんな感じ。 本当はず〜〜っと奥まで探索したかったが、それをするには朝から丸一日 白谷雲水峡のために予定を組まなきゃいけないだろう。 また、そうでもしないと白谷雲水峡には申し訳ない・・というものだ。
とりあえず外周道路を走ってみたいので、車に戻りドライブ再開。 ドライブの途中、気が向いた所で車を止めてみる。 ウミガメの産卵する浜辺や、灯台、滝などの景色が良いのはもちろんだが、 高台を走る道から見下ろす何気ない岸壁や海の景色が実に良い。 海面への陽の照り返しの雄大な美しさには、本当に心が和む。平和だ。
道を走る車が少ないのを幸いに、ちょくちょく車を止め外に出て、 しばし景色をボ〜ッと眺めてみる。私は陽光を浴び、シルエットになる。 太陽へと続く水平線の彼方には何があるのだろう。 水平線まで続く、海面の太陽光の帯。 例えば、この帯を何かが渡ったという伝説が、 密かに残っているのではないかとさえ思える。 名も無いビューポイントが、後になってけっこう心に残っていたりする。
ドライブの途中、異様な気分にさせられたのは、西部林道と呼ばれるエリアにさしかかった時だった。 ここらへんでは道は高台を走り、海面ははるか下方にある。 私が行った時は、私の車以外には他の車は走って無く、その林道がまた、 無理して土地を切り開いて(と言うか、海に落ちる山の中腹の森林地帯を切り開いて) 通したような場所。
車は異様な緊張感に包まれた。 なぜなら、・・・気が付けば道の両サイドや木々の上からは多数の野生猿がジ〜〜ッと こちらを睨み付けて座っている。 いわゆる「ガンをつけてる」ってヤツだ。 もし、車を止めたり、外に出てみたら、どうなったのであろうか? 私は襲われたのではないだろうか?
日光などで野生の猿が人間に危害を加えているという話を思い出した。 日光のような観光客で混んでいる場所と違い、 そこには私の運転する車に乗っている人達以外に人は居ない。 襲われても、誰かに助けを求めようもない。
数えきれぬくらいの野生猿の目は、明らかに我々の目を見ている。「何しに来た!?」とでも言いたそうに。 猿と目を会わすのを避けて、私は一定のスピードを保ちつつ、平静を装いながら エリアを通り抜けた。
この林道が走っている場所は本来、猿のテリトリーだったのかもしれない。 猿の縄張りに、道を通したのかもしれない。 しかし、ここを繋がねば外周道路は完成しなかったのであろう。 人間と野生動物と、自然の共存というものは、微妙なものであるに違い無い。
ただ・・・林道の景色そのものは、実に感じの良いものであった。 海寄りの木立の合間から差し込んでくる陽光、その木々の先の明るさは多分に海が反射した太陽の眩しさによるものに違い無いし、またそれらと、日陰になっている林道とのコントラストが美しい。 心が洗われるようでもあった。
ドライブを続け林道を抜けると、視界が開けた。 こちらを睨み付ける猿の大軍から抜け、少しホッとした気分。 ちょっとしたトンネルを抜けたような感じ・・・とでも言おうか。
なおも進み、「大川の滝」で車を止め、しばしひと休み。 休憩にはもってこいの場所だろう。屋久島の観光ポイントの一つだ。 滝の音とハーモニーする、あたりの環境音が心地よい。
空港から島の外周道路を時計と逆廻りでドライブして数時間。 旅の宿「いわさきホテル」に到着。 大きなホテルだった。 部屋の窓から見える遠くの海、宿の周りの自然環境、どれも広々として良い。 相変わらず緑が濃い。 屋久島に来てしまったんだなあ・・としみじみ思うと感慨もひとしおで、 目が遠くを見ているのに気づく。

▲モッチョム岳
また、ホテルの裏手には、モッチョム岳がそびえたつ。迫ってくるようでもある。 一度見たら忘れられない形をしている。その山姿の印象的なこと。 ぜひ一度皆さんにも見ていただきたい。
屋久島は、そんなに大きな島ではないし、私が行った時は道が空いていたので、 途中寄り道をしながら廻っても、半日もあれば一周できたのではないだろうか。
島内の移動を路線バス(?)に頼ると、バスは決して本数が多いわけではないから、 時間のロスが多いだろうし、移動の制約も多かろう。 それゆえ、ここを訪れる旅行者には、島内移動はレンタカーを絶対にお勧めする。
景色が良いので、ドライブは実に快適だ。 都会などの混雑した町でのドライブなどと違って疲れないし、 だいいち運転していて楽しい。 これ実感。
さて、明日はいよいよメインイベント、縄文杉への登山だ! 早く寝なくちゃ。
「縄文杉」編へつづく>>