BBS昭和の話題 - 掲示板
昭和30年代生まれに贈るオンラインマガジン
Updated 2009/02/21
ヒーローのマント 〜 B級服飾史
「マント」。何とも不思議な存在だ。これほど認知度が高いにも関わらず、日本で一般的な人生を送る限り、身につける機会の無い衣装は他にあるまい。

何故、日常的ではないものを身近に感じるのか。その原因の一端は我らがヒーロー達の服装にある。 昭和30年代、もはや戦後ではないと宣言され高度成長期の夜明けを迎えたとはいえ、子供が欲がる物が簡単に手に入る時代ではなかった。

あこがれのヒーローに変身するために、風呂敷という道具が身近に存在したことは、敗戦国の子供に贈られた僥倖であった。

幸せの黄色いハンカチならぬ、唐草の風呂敷を考証する。  

©春彩

戦後の日本の一般人でこれを着たのは、
NHKの「私の秘密」-事実は小説より希なりと申しまして-©高橋圭三 の出演者か、「東芝ファミリーホール・特ダネ登場」-さて、この方は-©熊倉一雄 の珍名さんくらいでしょう。

「マア いろいろあらアな」-©東京ぼん太

怪傑ゾロ: 1920年
ジョンストン・マッカレーの小説。(原題The Mark of Zorro)世界20数カ国で翻訳され5000万部以上も売れたといわれる。 スペインの圧政に苦しむ植民地ロサンジェルスの民衆と為政者に立ち向かう正義の味方。

バットマンの元ネタといわれ、 ヒーローの記号としてのマントはここに始まると思われる。

黄金バット
昭和初期に、紙芝居の主人公として、鈴木一郎作「黄金バッ ト」が人気を博した。 黄金骸骨に赤マント、中世騎士風というスタイルがすでに確立されている。戦後まもなくに復活し、児童雑誌にも連載され、後にはアニメーション化された。 スタイルはその度に変化したが、マントだけは引き継がれている。

初期のマントは三銃士やフランシスコ・ザビエルを彷彿とさせる。が、 物資の豊かではなかった時代に何処で調達したのか? どこ、どこ、どこから来たのかと問うてみたい。まあ、後の金粉、海パンにマントというアブナイ格好に比べれば、節度をわきまえた(TPOは?)服装ではある。

日本における怪人の記号としてのマントの原型と思われる。


20世紀デザイン切手

スーパーマン: 1935
不況に苦しむ米国クリーヴランドで、ジュリー・シーゲルが考案しジョー・シャスターが絵を描いた。

飛行具としてのマントはここに始まる。 全身タイツの元祖もスーパーマンであろう。

バットマン: 1938
アメリカン・コミックスを代表するヒーロー。DCコミックスに1938年より連載。 バットマンの本名は、大富豪のブルース・ウェイン。ゴッサムシティーの平和を守る。

伝統的なマントの形状から離れて、生物の翼をイメージしてデザインされた最初のマントであろう。

画像は1940年のBob Kaneのもの。

児雷也: 1956
ルーツは、宋代の説話集『諧史』の我来也までさかのぼるが、日本では『児雷也豪傑譚』が天保10年(1839)から明治1年(1868)まで、実に30年近い歳月をかけて全43編が出版された。

ここでは、マントが確認出来るものとして、杉浦茂の『少年児雷也』(昭和31年)を資料とした。

このスタイルは天草四郎あたりがベースであろうか? 日本初の飛行具としてのマントだと思われる。

スーパージャイアンツ: 1957
地球と宇宙の平和を守るため、エメラルド彗星から地球にやってきた、スーパージャイアンツ。

実写の飛行具としては、日本初だと思われる。 スーパーマンの影響を受けていると思われるが、マントが背面から肩を超え、ベルトのバックルまで延びているのが他に類を見ない。 男性ヒーローのマントにしては丈が短い。

鋼鉄の巨人/製作:新東宝 1957.07.30
巨人というほど大きくはない。

月光仮面: 1958
国産テレビ映画第一号。ラジオ東京テレビ(現TBS)が1958年2月24日に放送開始。悪の集団を二丁けん銃で懲らしめると、どこへともなく去って行く。正体は私立探偵祝十郎。

飛行しないので、マントはヒーローの記号として使用されている。が、マントがなかったら滑稽なのも事実。 何故ターバンなのかは不明。

ビッグX: 1963
第二次大戦中、朝雲博士がナチスの下で開発した最終兵器ビッグXが、二十年後に孫の昭によって蘇った。生物を巨大化し強化する秘薬ビッグX。

衣装自体は軍服がベースとなっていると思われる。特徴的な2列のボタンは、大戦下のドイツ軍の野戦用コートか日本陸軍正装品に同様の例がある。マントは何の役目も果たさ無い上、サイズも特大であり、記号というよりファッション?

パーマン: 1966
スーパー星からやってきた、スーパーマンにパーマンセットを受け取った須羽ミツ夫は突然、正義の為に戦わなくてはならなくなった。

支給されたヘルメットとバッジとマント以外は、自前の私服という、ヒーローとしては前代未聞のコスチューム。 形状としては肩で留めるシンプルなもの。

呼称の語尾に「マン」がつくが、2号は人間ではなく、チンパンジー。

遊星仮面: 1966

西暦2001年。地球の公転軌道上、太陽をはさんで反対側にある惑星ピネロン星が発見された。地球人とピネロン星人の間に生まれたのが、後に遊星仮面となるピーター。 地球とピネロン星の間で戦争を止めさせるために戦う。

亡き父の形見、遊星仮面のセット。 マスク・ライダー・シューターは必需品でしょうが、マントは何のため?空気のない宇宙空間ではためくのがご愛敬。

タイガーマスク: 1969(TV)
1969 秘密組織・虎の穴出身の“黄色い悪魔”タイガーマスク。やがて虎の穴を裏切ったことから命を狙われ、刺客と戦い続ける。

劇中では本来、悪役レスラーのコスチューム。作品として見た場合はヒーローの衣装として企画してあるはずで、判断が難しい。 プロレスなので当然ではあるが、格闘シーンでマントを脱ぐのは他に例を見ない。

科学忍者隊ガッチャマン: 1972
地球の未来を担う無公害エネルギーを得るためのマントル計画を独占しようとする陰謀団ギャラクター。 その魔の手から守るため南部博士のもとに編成された5人の科学忍者隊。(出典:タツノコプロオフィシャルサイト)

マントの形状としては特殊な部類。生物の翼を模した物としてはバットマンの先例があるが、日本では最初のケースと思われる。 ハイネックのカラー(襟)で装着しているのが斬新。

怪傑ライオン丸: 1972
時は戦国時代。日本最高の忍者・果心居士に育てられた獅子丸は「忍法獅子変化」を会得し、ライオン丸に変身する力を得た。大魔王ゴースンの手下と戦いながら、悪の首領のもとを目指して旅をする。

マントの形状はオーソドックスだが、表地黒・裏地金は他に例が無いように思われる。 無理矢理羽根を付けられた天馬ヒカリ丸役の白馬が哀れであった。


初代トヨタ・ハリアーのTVCMを見るたび、思わずペガサス!と叫んだのは私だけでしょうか?

秘密戦隊ゴレンジャー: 1975

黒十字軍による奇襲を受け、 イーグル日本ブロックの五つの支部が壊滅した…。 生き残った5人の若者は強化スーツを身にまとった『秘密戦隊ゴレンジャー』となり、 悪の組織・黒十字軍に敢然と立ち向かう!

マントの丈が短く、もはやマントと呼べるのかどうか。 ヒーローの記号としての意味も怪しい。 唯一、考えられる理由は「色付きの(悪の)戦闘員と思われたくない。」であろう。

ジャッカー電撃隊: 1977
世界中で犯罪行為を起こす巨大な犯罪組織「クライム」。これに対抗する4人のサイボーグ、ジャッカー電撃隊。電撃隊行動隊長・番場壮吉は、超戦士・ビッグワンに変身。ジャッカーとの合同技・ビッグボンバーで侵略ロボットを粉砕するのだ。

マントの丈はゴレンジャーよりさらに短く形骸化し、もはや記号とさえ呼べるのかどうか。 その反動か、ビッグワンのマントは大きい。ご覧のとおり、脚にまとわりついて邪魔になっている。静電気防止スプレーが必携であろう。

資料
私の見解では今のところ、

形状A型:三銃士→怪傑ゾロ→黄金バットの流れ(襟が立ち、前身を包むことの出来る外套)
形状B型:古代ローマ→スーパーマン→ビッグXの流れ(肩で留め、背面に垂らす、実用というより装飾)

機能A:飛行具 機能B:ヒーローの記号 機能C:悪役の記号

で分類できると考えている。

基本的に、ハレの衣装としてのマントを対象とするので、 サリーちゃんのパパのような普段着?は除外する。


タイトル 形状 機能 コメント
1957 スーパージャイアンツ      
1958 月光仮面 B B  
1959 遊星王子      
1959 七色仮面 B B  
1959 豹の眼 B B  
1960 ナショナルキッド AB A  
1963 ビッグX(TVは1964) B B  
1965 マグマ大使<ゴア>(TVは1966) A C  
1966 悪魔くん<メフィスト> B B  
1966 遊星仮面   B  
1966 黄金バット A AB  
1967 パーマン(TV) B A  
1969 タイガーマスク(TV) B C  
1972 科学忍者隊ガッチャマン   A  
1972 怪傑ライオン丸 B B  
1973 風雲 ライオン丸 B B  
1973 ダイヤモンド・アイ B B  
1975 コンドール・マン B B  
1975 ゴレンジャー A B  
1976 ザ・カゲスター AB B  
1977 ジャッカー電撃隊 A B  
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