しばらくすると、殴り書きでは物足りなくなって本格的なものに挑戦したくなる。 小学校高学年あたりだろうか…
たぶん、どんな雑誌にもあったと思うが、現役漫画家による「マンガの書き方コーナー」を参考にした。
まずは、道具から入るのだけど…
以前も話したように、なにを始めようとしても、まず道具が手に入らない環境にあったので、道具を何とか工夫する事から始まる…
かぶらペンと墨はなんとかなる ・・しかし、ケント紙はなかった・・ とりあえず、ここは今まで使っていた落書き帳でいくことにする…(画用紙は、いわゆるゴムかけの段階で紙面が荒れるので好きになれなかった)ホワイトは「絵の具の白」。それに、「筆」「筆洗」「パレット」「直定規」。
基本はこのあたりだろうか。
加えて今回、どうしても何とかしなければいけない道具があった・・
それは、雲形定規!
古い下敷きを切って、ひたすらやすりをかける ・・気の遠くなるような作業である…(これを、皮切りにその後、トレースのためのライトスタンドを手作りしたり、セル画を描くために水彩絵の具と接着剤を独自の割合で調合する方法を編み出したり… 無用のものを作り出す事にかけては、かなりの情熱を傾けるという性格の下地が出来上がった)
一応、万が一を考えて、以前に書いた「文房具店兼本屋」には、行ってみた… 少々耳の遠いおばあさんが応対してくれたのだが・・
ケント紙に対して「べたべたした紙は無いよ・・」 「雲形定規」については「蜘蛛型?聞いた事も無い・・」 一笑に付されてしまった、この二つの反応を聞いたあとで、スクリントーンの話を持ち出す事はできなかった。
(スクリントーンらしきものを画面に入れる必要に迫られた時には、等間隔に薄く鉛筆で目安となる線を引き、その升目の一つ一つを同じ模様で埋め尽くすという、これまた酔狂な事をやっていた…)
で、これだけの準備が整った所で一体何をしようというのか…
好きな漫画家の原稿丸写しである。汽車(あくまで、電車ではない)で1時間で、S市に出た折に何とか手に入れたコミックス!(ここにも、こじんまりとした本屋はあるが・・画材屋はない…)
黒い表紙の石の森章太郎(当時石森章太郎)作「サイボーグ009 第5巻」。(本来なら1巻から手に入れるほうが良いのだが、どんな本でも全巻そろいで置いてあることは稀であって、手に入ればそれが何巻であってもラッキーなのである…)
その、お気に入りの数ページをとにかく丸写しするという、世界征服にも似た壮大な計画を実行に移すべく、日々、目論んでいたのである…
これを写すからには、どうしても「雲型」は外せない。 何しろ動線だらけなのだから…それまでは、フリーハンドで何とかしていた動線も、こんなに多くては道具が欲しくなるってもんである。
かくして、散々な目にあいながらも一通りの準備が整う…
しかし、前途多難なのはここから先、描き始めてからやっと、1作分の原稿を完成させる事の大変さを身にしみて感じる事になるのである。


