タツノコ『三悪志』
第6回 逆転イッパツマン♪シビビーン・ラプソディー
『シビビーン・ラプソディー』は、イッパツマンのエンディング曲のタイトルである。 このシビれるような、それでいて力の抜ける“シビビーン”の言葉は、関根勤さんが使っていたという。曲を作った山本正之さんは、「がらくた工房」という劇団とつながりがあった。 「がらくた工房」というのは、小原乃梨子さんらが所属する事務所「バオバブ」主宰の劇団である。 前作『ヤットデタマン』の主題歌のバック・コーラスをしていたピンク・ヒッギーズという女性グループは、この劇団の研修生たちであり、関根勤さんは客演として芝居に参加していたことがある。 そういういきさつで、山本さんが関根さんに「面白いから使わせてくれ」と頼んだそうだ。 「10万枚以上レコードが売れたら印税あげる」という約束だったらしいが、関根さん…もらえたかな…?(これ、あんまり売れなかったから) ストーリー
1990年、リース業界で業績トップを誇るタイムリース社は、過去・未来への時空を越えたリースサービスを始めることに。 一方、業績第二位ではあるが下り坂のシャレコウベリース社はそれがおもしろくない。会長コン・コルドーは、社員の3人を「クリーン悪トリオ」とし、タイムリース社の新事業を妨害させることにした。「こんなこともあろうかと」と、タイムリース社のヒゲノ濃造部長がヤマトの真田さんのようなセリフを言ったかどうかは知らないが、ピンチにはイッパツマンが駆けつける。 「待ちに待ってた出番が来たぜ。ここはお任せ、逆転イッパツマン!」 (ちなみに、このセリフを言うイッパツマンは、ヤマトの古代進くんをアテた富山敬さん。オダテブタもそう)それぞれの会社の命運を賭けた戦いが繰り広げられる、タイムボカンシリーズ第5作目。 作品名や登場人物の名前は、野球を意識している。 主人公は豪速九(ごうそっきゅう)、ヒロインは放夢ラン(ホームラン)、サポートロボットは2−3(ツースリー)といった具合。 クリーン悪トリオ
今までは自分たちの野望のために戦ってきた三悪だが、今回はサラリーマン。 サブタイトルも『つらいなあ!休日出勤』『転職失敗!コスイネン』など、悲哀をさそうものがある。会社帰りに屋台で酒を飲んでは「人間やめたい…」と肩を落とす姿には、ただ涙・涙である。 その屋台の名前は「うえだ屋」 三悪にお酒を出してくれる親父は、うえだひでひとさんがモデルである。支社長の【ムンムン】(26歳) タイムリース社の本社があるオストアンデル市。 同じ市の北部にあるシャレコウベリース社の支店長。 支店の中では、業績が万年最下位。 部長の【コスイネン】(30歳) 妻と子供ふたりがいるが、単身赴任中。 ちなみに、妻はムンムンと同じ顔である。 課長の【キョカンチン】(30歳) もともと三悪の中での人気は、言っちゃ悪いが一番ない。 しかし、このキャラなくしての三悪はありえない。 ある時はボケて場を和ませ、またある時はその怪力で仲間を救う。 カレーライスに福神漬けが付いてないと寂しいのと同じなのである。 三悪は三人でひとつの美味しいハーモニーを奏でる。 三悪よ、永遠なれ…などと言うと、コラム最終回の〆になってしまうので続けよう。 おまけの美少女【ミンミン】(?歳) コン・コルドー会長の孫娘。 とにかくよく脱ぐお色気キャラ。 ムンムン危し、である。 見た目は10代であるが、実はコン・コルドー会長(どう見ても70歳は越えてるかと)が姿を変えている。 その正体は最終回で明かされる。 ミンミンという名前はスタッフ行きつけの中華料理店。 【球四郎】(26歳) シャレコウベリース社ロストアンデル西部支社長。 ハンサムなエリート。 大学時代にダイエットに失敗して死亡。コン・コルドーによってサイボーグにされた。 自分がサイボーグだとは気付いていない。 (『コン・バトラーV』のガルーダ>>みたいである。そっちはロボットだったが) メカ
困った時のメカマン・大河原。 今回もみごとな変型をするメイン・メカを作り上げた。タイムリース社専用運搬メカ・トッキュウザウルスは、ステゴサウルスのような恐竜型。 非常時には、イッパツマンの乗る弾丸ヘッド号と合体して巨大ロボット『逆転王』となる。 東映の『闘将ダイモス』はトレーラーが変型してロボットになっていたのを思い出す。大河原さんは、この複雑な変形を説明するのに、木型を作ってスポンサーに提示したという。 百聞は一見にしかず、速攻でOKが出たそうな。富山敬さんの声で「トッキュウザウルス・スーパーチェンジ!逆転王完成!すごいメカ、一発合身大見参」のCMも良かった。ところがこの頃から玩具メーカーの商戦が激化。次々と新商品が求められ、このすばらしい逆転王の命はわずか2クールちょっと。 第30話『シリーズ初!悪が勝つ』で大破の憂き目にあう。 新しいメカは『三冠王』、トッキュウマンモスが変型する。 飾りが多くなって重そうになった…強そうとも言える。 悪玉メカは、シャレコウベバギー。後半はシャレコウベダチョウ。 【コクピットメカ】 ●おだてブタ:「飛ぶブタ」「憎まれブタ」「慌てるブタ」「スーパートンブタ」などバリエーションが豊富 ●女子高生メカ:「うっそ〜、ほんと〜、かわいい〜」の三人娘。 ●オロカブ:カブ型で着物を着ている。脱ぐと立派なおっぱい付き。ある意味、お色気キャラ。 ●びっくり主水:「びっくりたまげた、もんざえもん」頭に栗をのせた石臼のキャラ。(元はさるかに合戦であろう) ●イケマスイタチ: そろばんをはじきながら「ねがいましては、こりゃいけまっせ〜」と調子付かせるイタチ。 余談
【「人間やめて何になる」のコーナー】三悪がなったものをあげてみよう。(それぞれ、ムンムン、コスイネン、キョカンチンの順) ・自由の女神、考える人、大仏。 ・鯛、どじょう、ダボハゼ。 ・ロッキングチェアー、学習椅子、ソファー。 ・サザエ、しじみ、はまぐり。 ・ゴルフボール、バレーボール、野球ボール。 他にもいろいろあるが、結局何になっても辛いことはある。 だからまた人間としてがんばろう…人生を考えさせられる重いギャグコーナーだった。 後の『きらめきマン』の反省コーナーはこの流れをくむと思われる。 【シリーズ初!悪が勝つ】 TVアニメの場合、「クール」という単位で区切るので、話の区切りは26話あたりでつけるのが普通である。(1クールは13話) イッパツマンの区切りは中途半端な30話。なぜだろう? 実は『タイムボカン』第1回から数えて、この回が通算356回目にあたる。 そこまで意識してここに大きな区切りを置いたのでは…と考えられる。 このこだわり具合、スタッフにとってもこの回の意味は大きいのだろう。 コスイネンは、イッパツマン打倒のため、山にこもって修行をする。「山ごもりの修行」と言えば、有名なのが極真会空手の大山倍達さん。 修行を途中で放り出さないため、片眉を落として下界恋しさを断ち切る。「こんなヘンな顔では戻れない」ってことらしい。 両眉を剃ってアイペンシルで書けば…などと言ってはイケナイ。 修行の成果かスポンサーの意向か三悪は勝利し、次回からは三悪を主人公にした『サンパツマン』になるはず…だったが、明智光秀の三日天下。せめてナポレオンの百日天下くらいは欲しかった。 最終回
ヨウトホエールにあるコン・コルドーの本拠地に呼びつけられた三悪と球四郎は、突然クビを言い渡される。そこへ豪たちがやってきて戦いとなるが、コン・コルドーは逃げ出してしまった。 後を追った球四郎は、用済みと言われタイム空間に飛ばされる。 球四郎の放った最後のミサイルがコン・コルドーを爆破…したはずだったが、さすがにしぶとい。『ガッチャマン』の総裁X並である。今度はタイムリース社の技術主任・星ハルカを誘拐して、イッパツマンを呼び出す。 コン・コルドーは宇宙人であり、その目的は地球人の宇宙進出を阻むことだった。欲深い地球人が宇宙進出を果たせば、宇宙が乱れる。コン・コルドーは自分のことを「宇宙の意思」と名乗る。 洗脳されたハルカとイッパツマンの戦い。 優位のハルカがイッパツマンにとどめをさそうとするのを、身を呈してかばうラン。 その愛に打たれたハルカは、どこへともなく消えていき、コン・コルドーは円盤ごと三冠王に破壊される。 そして三悪は、幸福行きの列車に乗って新しい道を探すのだった。 JRが日本国有鉄道だった頃、北海道の広尾線には「愛国」「幸福」という駅があった。 “愛の国から幸福へ”…切符は売れに売れて一躍有名になったが、ブームが去り赤字路線として廃止。 この最終回の放映、1983年から4年後の1987年のことだった。 沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらはす… 大人気を誇ったタイムボカンシリーズも、視聴率的に苦戦。 次の『イタダキマン』で一旦シリーズを終了することとなる。 第7回『イタダキマン/どびびぃ〜んセレナーデ』>>に続く。 |
![]() Author :ヤマネコ ヤマネコ改め、ちとせさんのブログへ>> ▼逆転イッパツマン 放映 1982年2月13日〜1983年3月26日 フジテレビ系、毎週土曜夜6時30分〜7時00分、全58回 最高視聴率 20.8% 製作/吉田健二 企画/九里一平、岡正(フジテレビ) 原作/タツノコプロ企画室 総監督/笹川ひろし 担当ディレクター/植田秀仁 プロデューサー/井上明、岩田弘、内間稔(読売広告社) キャラクターデザイン/天野嘉孝 メカニックデザイン/大河原邦男 ▼イッパツマン |
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