『ゼンダマン』は一見好調にギャグを飛ばし、玩具の売れ行きも視聴率もそれなりなように見えた。 しかしタツノコプロ内部では、さまざまな嵐が吹き荒れていた時期だった。
吉田竜夫さんが亡くなられて、次々とタツノコプロを去る人が出てきたのである。 鳥海尽三さんは、自分でプロダクション(鳳工房)を作って独立。 布川郁司さんも同様に、スタジオぴえろを設立。 鳥海永行さん、高橋資裕さん、安納正美さんらはそちらで演出家として活躍していくことになる。 陶山智さん、押井守さん、西久保瑞穂さん、そして…笹川ひろしさん。
笹川ひろしさんには、同郷の平田昭吾さんという友人がいる。 彼が、西崎義展プロデューサーに頼まれ、笹川ひろしさんに移籍の話を持ってきたのである。「外の空気を吸ってみませんか?」 このあたりの胸のうちは、ワニブックスの『ぶたもおだてりゃ木にのぼる』(笹川ひろし著)に詳しいので、興味のある方はどうぞ。
タツノコ以外の作品に笹川ひろしさんの名前を見た時は、笹川ひろしさん=タツノコという図式の出来上がっていた一ファンにとっては胸が締め付けられるような思いがした…。 しかし、笹川ひろしさんは完全にタツノコを離れたわけではなく、移籍の時に「タイムボカンシリーズは続ける」という条件を出してくれていた。
そして1980年2月2日、タイムボカンシリーズ第4弾『タイムパトロール隊オタスケマン』の放映が始まる。
「歴史を守って過去未来、正しい歴史の守り神。世界の助っ人オタスケマン、只今参上!」 近未来、地球の歴史管理を目的にタイムパトロール隊が組織された。
宇宙ステーションを本部とし、隊員は星野光(オタスケマン1号)・三ケ月ナナ(オタスケマン2号)の正義のふたりと、アターシャ・セコビッチ・ドワルスキーの三悪(オジャママン)。 そして、顔良し頭良し要領良しのゲキガスキー。 東南長官の元、タイムマシンを使って歴史を変えようとする悪人を日夜監視している。
その悪人の名は、トンマノマント。 (上から読んでも下から読んでも同じトンマな名前) 正体は最終回で明かされる。 自分の書いた歴史書通りに歴史を操ろうと、オジャママンたちをそそのかし手下とする。 正義のオタスケマンと悪のオジャママンが同じタイムパトロール隊の隊員で、毎日顔を合わせていながらお互いの正体を知らずに戦っているという図式がおもしろい。 『勇者ライディーン』の、(一回限りであったが)同じ学校に通うひびき洸と砂場金吾なども思い出させる。 視聴者にとっては、優越感とじれったさを味わえるおいしい設定である。
定番の「おしおき」はなくなったが、替わって「愛の特訓」がある。 AかBのどちらかを選ぶのだが、毎回オタスケマンが楽なデートもどきコース、オジャママンがハードなおしおきもどきコースになってしまうのは日頃の行いとしか言いようがない(合掌)。 一度だけ、32話での特訓はオジャママンのほうが楽なコースに当った。
乙女【アターシャ】(33歳)
歴史がトンマノマントの書いた歴史書通りになれば、「絶世の美女」。 シリーズ女ボス最高齢で、結婚願望が強い。 『劇場版・タイムパトロール隊オタスケマン アターシャの結婚披露宴!?』では、それをネタにされてひどい目にあっている。
タイムパトロール隊を全滅させんと企むトンマノマントが、美男の花婿とアターシャの結婚をセッティング。幸せの絶頂のアターシャだが、花婿がアンドロイドだとわかり、どん底に。 星空に悲痛な声が響く。「アンドロドロモチ〜〜」 。 これは、トンマノマントが作った花婿の名前なのだが、アンドロイドであることがすぐわかってしまいそうなネーミングである。タツノコには、こういう遊びが多い。例えば、『科学忍者隊ガッチャマン』で、ベルク・カッツェが変装して航空ショーに出た時の名前は「カッツェンベルヒ」だったり。
天才【セコビッチ】(29歳)
歴史に「大科学者」として名を残すために、トンマノマントに従っている。 しかし、見たところアターシャへの愛もかなりのウェイトを占めている。
怪力【ドワルスキー】(32歳)
彼が望むのは「史上最強の英雄」。 今回、悪玉にゲキガスキーが加わったことで、さらに見せ場が少なくなってしまったような気がする、かわいそうなキャラ。
プラスアルファの【ゲキガスキー】(年齢設定不明)
前回のプラスアルファ、ニャラボルタの人気が出たことから柳の下の2匹目のドジョウを狙ったキャラだが、山下正之さんのアブラゼミのような声(笹川ひろしさんのお言葉)と相まって、思惑以上に人気が出た。このシリーズ、脇役ばかりに人気が出て、主役はかわいそうかもしれない…。
スポンサーが望むのは、売れる玩具。メカは魅力的でなくてはならない。 『オタスケマン』のメカは今回7つ。一週間の曜日にちなんでいる。
【日曜日】オタスケサンデー号
オタスケマンの乗るコウノトリ型母船。以下の救援メカ6台を乗せている。
【月曜日】オタスケタヌキ
月と言えばタヌキ。スタジオジブリの『平成狸合戦ぽんぽこ』でも、月のシーンは効果的に使われていた。
【火曜日】オタスケサイ
なんでサイが火なのかはよくわからないが、一応耐熱メカらしい。
【水曜日】オタスケアシカ
水に住む動物をモチーフにした水中メカ。トドでもアザラシでも良かったのだろうが、アシカのほうがかわいいわな。
【木曜日】オタスケウータン
木から森、森の人・オランウータン。『風の谷のナウシカ』の森の人とは無関係と思われる。
【金曜日】オタスケキンタ
マサカリかついだ金太郎。このメカだけ動物モチーフではない。さすがに出尽くしたか…
【土曜日】オタスケガエル
「土に還る」か?それとも冬眠明けのカエルが土から出てくるイメージか。
オジャママンのメカは、アンドロメダマ号。 ハゲタカ型。このメカは変型可能で、フクロウ型のオジャマメカにチェンジする。 毎週の悪玉メカは、最初は顔の形をしたメカが続いた。
第1回の「アターシャの顔メカ」から始まって、「ナポレオン丸」「ベートーベンの顔メカ」「クレオパトラの顔メカ」…と続いていたが、20話からは二つの動物を合体させた“合体アニマル・メカ”となった。肖像権の問題などもあって、続けられなかったらしい。
悪玉のテーマソング『アーウーオジャママン』の「アーウー」というフレーズは、当時の大平総理大臣の口癖である。途中ではいる「ホーホーホー」は、福田さんのパロディ。
ゲキガスキーのテーマソング『ハレー彗星』は、当時ハレー彗星が地球に接近していて話題になっていたところから。 すべてゲキガスキーの声をあてていた山本正之さんの曲である。 山本さんは、時事ネタが好き?
『オタスケマン』のネーミングは、野球をはじめ実社会のいろいろな場面で使えることから、流行語になることを狙って付けられたもの。
東南長官の名前は、『キャシャーン』の東博士と『ガッチャマン』の南部博士を合わせたもの。 悪玉の名前は、ロシア語風に統一してある。 (アターシャ=あたし、セコビッチ=せこい、ドワルスキー=ド悪好き、と元は日本語であるが)
前回の第52話で、タイムパトロール隊に直接挑戦状を叩きつけたトンマノマント。東南長官の両親の結婚式を邪魔し、長官をこの世に生まれさせないようにすると言う。ちなみに、長官の両親の結婚式は1936年1月24日。この第52話の放送は1981年1月24日である。
ヒカルは、薄々オジャママンがアターシャ達4人であることに気付いていた。東南長官の母親を結婚式前に誘拐するセコビッチの後頭部に、ミニコン発信機を投げつけておく。
最終回の第53話。タイムパトロール隊本部に戻ったオタスケマンは、アンドロメダマ号の中でミニコン発信機を発見する。東南長官はタイムパトロール隊アターシャ班を呼びつけ、罠を仕掛ける。長官の作ったトンマノマントを出現させ、オジャママンは用済みだと言わせたのである。
思わず「それは偽者だ」と叫んでしまうゲキガスキー。本当のトンマノマントは、ゲキガスキーの作り出したコンピューター人間でただの映像だったのだ。 その発信回路は、ヒネボットの中に埋め込まれており、ゲキガスキーのミニコンピューターと繋がっていた。 トンマノマントから通信が入ると、ヒネボットがカイカイダンスを踊るのはそういう訳だったのだ。
ゲキガスキーが歴史を変えようと考えたのは、地球の未来を心配してのことだった。このままでいくと、自然破壊と公害で人間は滅亡してしまう。それを防ぐためには、誤った流れを変えなければならない…
あのオマヌケな風貌と妙ちきりんな指令からは考えもつかない、こんな崇高な目的があったとは。 逮捕され拘留されたオジャママン。 ちょうどその時、地球にオオボラー彗星が近づきつつあり、このままでは地球衝突してしまうという情報が入る。 ゲキガスキーは、三悪に「歴史に名前を残せる」と誘って、アンドロメダマ号で彗星に特攻をかける。彼らは宇宙の塵となってしまったのか… (否。三悪は不滅である)
第5回『ヤットデタマン♪ミレンジョ・ララバイ』>>に続く。







