ひみつ基地 〜田んぼの友〜
晩秋。刈り干しの脱穀が終わり、田んぼに藁の束が積み上げられると、近所の子供達が三々五々集まってくる。「ひみつ基地」を作るのだ。
作り方は代々受け継がれている。設計図も現場監督も無しで各々が役割を分担し、作業は滞ることなく黙々と進む。
やがて、エスキモーの家をトンネルで繋いだような代物が出来上がる。日没が早い季節なので、初日は作るだけでお終い。翌日からは漫画やお菓子を持ち込んで、遊びのベースキャンプになる。
基地の中は薄暗く、藁くずで埃っぽい。決して快適とは言えないけれど、居心地が良かった。心理学でいう胎内回帰願望なのかもしれないが、木枯らしが吹いても暖かく実用的だった。
当時、年末に発行される学年誌の新年特大号のグラビアには必ずといって良いほど、北国の「かまくら」が紹介されていた。大雪の降らない地域に住む私には憧れの存在で、藁のひみつ基地で「かまくら」に想いを馳せたものだ。
大人になった今。「 かまくら」は望めば体験出来るが、藁のひみつ基地は分別が邪魔をする。「若い時の苦労は買ってでもしろ」という。子供にしか出来ないコトは、あとからお金では買えないのだ。