昭和30年代生まれに贈るオンラインマガジン
Update: Oct.2005
スクリーンにチェリオ!
1970年代の映画鑑賞記。
当時の映画館でよく飲んだのはチェリオ(乾杯の意)だった。
記事は公開時の記憶を元に書いたものです。

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人間の証明|1977年鑑賞

『犬神家の一族』に次ぐ角川映画第二弾。原作は森村誠一のベストセラー。 「読んでから見るか 見てから読むか」のキャッチコピーとジョー山中の主題歌がTVで大量に流されていた。

【ストーリー】
東京ロイヤル・ホテルの42階。今をときめくデザイナー八杉恭子のファッション・ショー会場へ向かうエレベーターの中で悲鳴があがった。黒人青年が倒れて死んでいたのだ。

胸にはナイフ、手には西条八十詩集。残されたメッセージ「ストウハ」「キスミー」を手がかりに事件を追う刑事は、時代に翻弄された母子の悲劇のみならず、自らの人間の証明に向き合うことになる・・・

劇中にフジテレビの『小川宏ショー』の報道場面が流れる。アナウンサーは若き日の露木茂。お馴染みの『毎朝新聞』や『東都大学』ではないのがドラマにリアリティを与えていた。

公開された1977年は終戦後32年。リアルタイムの物語とするにはタイムリミットだった。青年ジョニー・ヘイワードが老けてしまうと、ナイーブさが不自然になってしまうからだ。

先に公開された映画『砂の器』やドラマ『時間よ、とまれ』>>も時代に駆け込むかの様に制作された。もはや戦後ではないつもりの日本に旧日本軍兵の帰還が相次ぎ、「戦後の昭和を総括したい」という時代の空気があったのかも知れない。

『人間の証明』は映画の香りという点では『砂の器』に及ばず、当時の評論家には酷評されたが、制作費をかけただけの見応えはあり、勢いが感じられた。なにより、一連の角川映画が斜陽だった日本映画に観客を呼び戻した功績は大きい。

母さん、僕のあの帽子、どうしたでせうね
ええ、夏碓氷から霧積へ行くみちで
渓谷へ落としたあの麦藁帽子ですよ 〜西条八十〜

原作者、森村誠一は『人間の証明』誕生の経緯について、自らのサイトにこう書いている。

《角川氏が当時創刊した「野性時代」の執筆依頼に見えられたとき、私の目を睨むように見て、「作家の証明書になるような作品を書いてもらいたい」と言った。だが、締め切り日が迫ってきても書けない。そのとき、胸の奥でゆらりと動いたのが、学生時代訪れた霧積温泉の弁当の包み紙に刷られていた「帽子」の詩であった》

物語は登場人物の人生が運命的な出会いで結ばれ、複雑に絡み合っている。小道具もまたしかりで、ホテルニューオータニがあの形でなければ、殺人事件は被疑者不明のまま葬り去られたに違いない。

森村は劇中でホテルのフロントマンを演じていたが、実際に『ホテルニューオータニ』でホテルマンを経験している。鄙びた宿の弁当の包み紙にあった「麦藁帽子」は森村の人生を通さなければ、「展望レストラン」と出会い『人間の証明』とはならなかっただろう。 舞台裏にも運命的な邂逅があったのだ。


《余談》
フジTVのドラマ『海のオルゴール』で、幼い頃に母親に捨てられた青年を池内博之が演じているのを見て、その風貌からジョニー・ヘイワードを思い出したが、最近リメイクされた『人間の証明』に本当に登場して驚いた。

岩城滉一の役は反町隆史だと思っていたのだけど・・
人間の証明
DVD商品情報>>

▼人間の証明/1977
監督:佐藤純彌
出演:岡田茉莉子、ジョー山中、松田優作
三船敏郎、鶴田浩二

▼霧積温泉
金湯館公式サイト>>


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