牛乳びんの栓抜き
ガチャガチャと自転車の荷台で瓶の触れ合う音、木製の牛乳受けのゴトンパタンという音で子供時代の朝は始まった。
届いた牛乳を飲むには、薄紫色のビニールをはがし、販売店が配る栓抜きでフタを開けた。「飲用乳の表示に関する公正競争規約施行規則」の第20条には、「牛乳のガラスびん容器に使用すべきフードの色は薄紫色とし、牛乳以外の飲用乳にはその色を使用してはならない」とあるが、当時の『明治ゴールド牛乳』は黄色だったような気がする。
栓抜きは小学校の給食の時間にも使ったが、順番を待てずに手で開けることが多かった。指で押し込むと手や服を汚すので爪で開けるのだが、表面だけ剥がれてしまい、結局押し込む羽目になるのだ。
昭和45年頃、学校で牛乳瓶のフタを使ったメンコ遊びが流行った。机の上に一枚ずつ出し合い、息を吹きかけて移動させ相手のフタに乗っかれば勝ちで、相手のフタを貰えるのだ。
給食の牛乳は一時期「テトラパック」だったが、もしそれが主流になっていたらこの遊びは生まれなかっただろう。 一方、我が家では昭和50年代の中頃にスーパーで紙パックを買うことが多くなって、宅配を頼まなくなった。
最後に使っていた栓抜きは「キリの先に輪っかがついていて、刺した後にフタをくわえ込む」ようになっていたが、キリの先はたいして尖ってないので、刺すのに失敗して手を汚すこともあった。
現在の飲料の容器はスマートに開けられるものが主流だが、牛乳は紙パックになっても開け方が今一つあか抜けない。余計なゴミが出ないのが牛乳の素朴な優等生的イメージに似合ってはいるけれど。
牛乳はよく言われる程には匂いを吸収しないらしいが、それでも紙パックの牛乳は紙の匂いがする。そのたびに「牛乳びんのフタに鼻先を近づけて遊んだ記憶」が甦るのだ。