昭和30年代生まれに贈るオンラインマガジン
Update: april.2004
失恋レストラン  〜まんがの中の憧れの食べ物〜
「片想い」。世の中にこれ程、甘美なものがあるだろうか? 成就すれば見えてしまう現実を、妄想という甘いオブラートで包みこむ。想いのままである。

「絵に描いた餅」。届かぬが故に募る想いは、やがて心の中に至高の一品を作り上げる。

今ほど豊かではなく、海外旅行等、夢のまた夢だった子供の頃。TVやまんがで出会った素敵な食べ物への憧れは片想いにも似て、絵に描いた餅を神格化した。 大人になって、実際に口にする機会が訪れても、断じて彼の君ではない。

これは、憧れの食べ物達への失恋レポートである。
チビ太のおでん
チビ太のおでん:おそ松くん

出会いは突然やってきた。それは、なんの前触れもなしに食卓のおでん鍋の中にいた。食べてしまってから正体を知った。

昭和41年、『おそ松くん』のチビ太の「おでん」は串に刺さっていた。我が家ではおでんを串に刺す習慣はなく、それだけで実に美味そうに見えた。晩ご飯のおかずが一転してスナックに思えたのだ。

しかし、おでん種が謎だった。『おそ松くん』はギャグまんがで、タッチがリアルではなかった。モノクロ画面と相まって、種の推定が困難だったのだ。不明ゆえに妄想をかきたてた。候補は…

△……こんにゃく、厚揚げ。
○……がんもどき、大根、玉子。
□……ちくわ?

△……「こんにゃく」で議論の余地はないであろう。厚揚げは二等辺三角形の底辺を下にするとと切り口が下を向いて汁が垂れる。しかも、比重が大きいうえに柔らかく、持ち歩くうちに串から抜けてしまいそうだ。

○……大根は一口囓った時点で、割れて串からはずれてしまう可能性が高い。絵は真円に近いから玉子ではないだろう。おそらく、「がんもどき」。

□……これがわからなかった。筒状で両端が切り落としてあるのは「ちくわ」くらいしか思いつかなかったが、筒の側面に線が描いてある。さらに、竹輪ならシルエットはこんなに直線的ではない。

おでん3姉妹。末の妹はずっと行方不明だった。見えぬ姿に想いは募ったが、次第に三十数年の歳月に埋もれていった…

さて、つい先程まで口の中にあった物体は、『ちくわぶ』というものであると関東出身の同居人に知らされた。ふと、天啓が訪れた…これはアレではないか?… あとで調べてわかったのだが、東京特有のおでん種だという。捜しても見つからなかったわけだ。九州出身の僕に思いあたるはずがなかった。

初めて口にしたその触感は、薩摩揚げ等の練り物を思わせる見た目を裏切り、洋食のニョッキに近かった。シェー!! トレビア〜ンザンス。


《公式発表》
赤塚不二夫オフィシャルサイトのQ&Aによれば、
上から「コンニャク、ガンモ、ナルト」で、味は関西風だそう。
▼おそ松くん
昭和41年2月5日〜42年3月25日
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▼ちくわぶ
東京のおでんに特有のたね。小麦粉のタンパク成分(グルテン)が、もちっとした口あたりを生む。クタクタに煮たのが好き、という人が多い。
---紀文 おでんだね事典より

▼ちくわぶの起源、分布について
ちくわぶ倶楽部 >>

▼チビ太のおでん/サークルK
『チビ太のおでん』や『トト子のおでん』はカネサダが開発した商品。
カネサダ >>

▼証拠
赤塚不二夫の公式サイトでチビ太が手にしているのを確認できる。
これでいいのだ >>

▼おでん
歴史や分類、おでん種の分布もわかる。
おでん博物館 >>

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