チビ太のおでん:おそ松くん
出会いは突然やってきた。それは、なんの前触れもなしに食卓のおでん鍋の中にいた。食べてしまってから正体を知った。
昭和41年、『おそ松くん』のチビ太の「おでん」は串に刺さっていた。我が家ではおでんを串に刺す習慣はなく、それだけで実に美味そうに見えた。晩ご飯のおかずが一転してスナックに思えたのだ。
しかし、おでん種が謎だった。『おそ松くん』はギャグまんがで、タッチがリアルではなかった。モノクロ画面と相まって、種の推定が困難だったのだ。不明ゆえに妄想をかきたてた。候補は…
△……こんにゃく、厚揚げ。
○……がんもどき、大根、玉子。
□……ちくわ?
△……「こんにゃく」で議論の余地はないであろう。厚揚げは二等辺三角形の底辺を下にするとと切り口が下を向いて汁が垂れる。しかも、比重が大きいうえに柔らかく、持ち歩くうちに串から抜けてしまいそうだ。
○……大根は一口囓った時点で、割れて串からはずれてしまう可能性が高い。絵は真円に近いから玉子ではないだろう。おそらく、「がんもどき」。
□……これがわからなかった。筒状で両端が切り落としてあるのは「ちくわ」くらいしか思いつかなかったが、筒の側面に線が描いてある。さらに、竹輪ならシルエットはこんなに直線的ではない。
おでん3姉妹。末の妹はずっと行方不明だった。見えぬ姿に想いは募ったが、次第に三十数年の歳月に埋もれていった…
さて、つい先程まで口の中にあった物体は、『ちくわぶ』というものであると関東出身の同居人に知らされた。ふと、天啓が訪れた…これはアレではないか?… あとで調べてわかったのだが、東京特有のおでん種だという。捜しても見つからなかったわけだ。九州出身の僕に思いあたるはずがなかった。
初めて口にしたその触感は、薩摩揚げ等の練り物を思わせる見た目を裏切り、洋食のニョッキに近かった。シェー!! トレビア〜ンザンス。
《公式発表》
赤塚不二夫オフィシャルサイトのQ&Aによれば、
上から「コンニャク、ガンモ、ナルト」で、味は関西風だそう。