小池さんのラーメン: オバケのQ太郎
初デートの日、憧れの君はきっかり3分後にやってきた。
初体験はマニュアル通りに完璧に済ませたかった。『オバケのQ太郎』で知ってから十数年、シチュエーションは奇しくも当の小池さんと同じ、侘びしいアパートの一室だった。
『オバケのQ太郎』で、新婚の小池さんが奥さんにインスタントラーメンを食べさせてもらえず、「ラーメン…ラーメン…」とうわごとのようにつぶやくエピソードがあった。それほどまでに美味いものなのか… 以来、「ラーメン…ラーメン…」と憧れ続けたのだが、僕は食べる事が出来なかった。
小池さんのラーメンが『日清のチキンラーメン』であろうことは放送当時から確信していた。味付きの袋麺にお湯をかけて作るインスタントラーメンを他に知らなかったからだ。が、僕の母親は食べさせてはくれなかった。
というのも、僕の出身は福岡。つまりラーメンといえば《とんこつ》なのだ。『チキンラーメン』の縮れ麺と醤油風味は口に合わなかったのだろう。母親は自分が認めないものは子供にも与えようとはしなかった。
とはいえ、《とんこつ味》のインスタントラーメンが世に出たのは、1979年の『ハウス王風麺』が(全国区では)最初だったのだが、地元には『マルタイ・棒ラーメン』というインスタントには希なストレート麺(しかもノンフライ)の逸品があって、我が家はもっぱらこれだった。
で、初体験は学生時代に、一人暮らしのアパートで迎えることと成った。
さて、まずはスープをすする。うん??想像していた東京ラーメンじゃない… 麺はつるつるとすすれるはず…が縮れて細い… カップヌードルではないか??
「ラーメン…ラーメン…」満たされない僕の口元は小池さんの波型になっていた。
(注:妄想に失恋しただけで、チキンラーメンそのものは好きです。)