昭和30年代生まれに贈るオンラインマガジン
Update: Aug.2006
小さなスナック
僕が初めて君を見たのは〜♪ 食べ物に関する雑記です。
▼小さなスナック
作詞/牧ミエコ・作曲/今井久・唄/パープル・シャドウズ
スープの冷めない距離:クノールスープ

子供時代に読んだ発明家エジソンの伝記に「貧乏なので肉入りのスープが飲めなかった」というエピソードがあった。私は「スープが飲めるだけでも幸せじゃないか」と思った。当時のスープは私にとって特別な存在だったからだ。

家庭で食べる洋食といえばフライ、オムレツ、ハンバーグ。スパゲティといえばミートソースかナポリタンだった時代。それらの「洋風おかず」は御飯と味噌汁と一緒に食卓に並んでいた。

パンは朝食か昼の軽食として食べるモノで、外食の王様『お子様ランチ』にもスープはついていなかったと思う。ナイフとフォークで食べる食事は憧れの存在だったのだ。

そんな時代に一筋の光明が差した。東京オリンピックの年に『味の素』(現・クノール食品)からスープミクス『クノールスープ』が売り出されたのだ。

固形スープを使えば、手作りスープは大した手間ではないが、『クノールコンソメ』『味の素コンソメ』『マギーブイヨン』が発売されたのは『クノールスープ』より*後で、缶詰の『キャンベルスープ』は近所のスーパーには置いて無かった。(*順に1965、67、67年)

『クノールスープ』にはチキンヌードル、コーンクリーム、ポタージュ、*トマトスープ、*ビーフコンソメの5種類があり、袋入りの粉末を*水で溶いて鍋で暖めると4人前のスープが出来上がった。(*この二つは記憶が曖昧 *クリーム系は牛乳)

特に気に入ったのがチキンヌードルとポタージュで、チキンヌードルには1/4インチ程のアルファベット型のパスタ、ポージュにはクルトンが入っていたのが嬉しかった。

以来、「洋風おかず」の日には『クノールスープ』と小さなフランスパンを添えるのが私にとっての正餐となったが、 高校を卒業して実家を離れて暮らすようになってからはスープは手作りするようになったので、『クノールスープ』の存在は忘れてかけていた。

最近、味噌汁をインスタントで済ます家庭が増えているというTV番組を観て、そういえばクノールは『カップスープ』のCMばかりだなと思い、スーパーの食品売り場を覗いてみた。

昔ながらの『クノールスープ』は片隅に追いやられ、棚の殆どを『カップスープ』が占めている。種類もポタージュとコーンクリームだけだ。

「スープの冷めない距離」という表現がある。親と世帯を別に構えても面倒を見られる距離を例えたものだ。転じて親子の適度な距離感を指す事もある。

『カップスープ』なら、食べる直前にお湯を注ぐので冷める事はないが、便利な反面、家族が「同じ釜の飯」を食べる感覚は希薄だ。

現在、日本では一つ屋根の下に住む家族の食事の時間がずれ、個(孤)食の時代と言われる。スープは冷めなくなったが、家庭の食卓は冷めているように思う。


《余談》
スープは澄んだモノ、ポタージュはクリームタイプというイメージがあるが、スープは英語でポタージュはフランス語。同じモノを指す。先入観の一因は『クノールスープ』のネーミングでは?
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