昭和30年代生まれに贈るオンラインマガジン
Update: May.2005
眠れぬ夜
眠れない夜と雨の日には 忘れかけてた愛がよみがえる♪
70年代の読書メモ。
▼眠れぬ夜
作詞・作曲/小田和正/唄・オフコース
白い本/二見書房 1973年発行

今から30年程前のある日、ひとりの男が本屋の棚の前を行きつ戻りつしていた。不思議な本が並んでいるのに気付いたからだった。

男は人間ではなかった。いわゆる亡霊というもので、かつては平家の一族だったらしい。けれども、ずいぶん昔のことなので、自分が何者であるかを忘れてしまっていた。

街では「草木も眠る丑三つ時」にも明かりが灯るようになり、世の中に闇というものが無くなった時代。幽霊や悪霊は居場所を失い、人間社会にまぎれて暮らすようになっていたのだ。

その本は真っ白だった。表紙にも中身にも何も書いてないのに、値段だけはついていた。しばらく眺めていると、初老の夫人がその本を手に取り、ページをめくり始めた。 男は思いきって話しかけた。

「あのう、失礼ですが、それは何かの役に立つものでしょうか」
「えぇ、信じる事で救われるのです」
「私には意味が分からないのですが」
「わたしにもよくわかりません。世の中の全てが空なんだそうです」
「なにも書いてないように見えますが、なるほど、空ですか・・」
「なにかお悩みのようですが、一冊お持ちになってはいかがでしょうか」

男は興味を惹かれて本を手にとり、レジへ向かった。

側でやりとりに耳を傾けていた店主は、「どうやら、あの本に書いてある文字が見えない連中がいるらしい。それでも、時々買って行く奴がいるのなら、何も刷らなくても売れるじゃないか」と考えた。

男の手には『般若心経入門』が握られていた。

そして、誕生したのが『白い本』だった。『耳無し芳一』の怪談が書かれてから80年後の事であった。今では、その意味は忘れ去られ、日記帳代わりに買う人間もいるという。

・・というのは、私が今作ったショートショートです・・怒らないで・・当時好きだった星新一風に・・違う?

『白い本』は1973年 に二見書房が発売。当時は売り切れ続出のベストセラーだった。私が買ったのは安い「まがいモノ」だった。とはいえ、ただ紙が綴じてあるだけなので、著作権法や特許法には触れないかも?
白い本 二見書房
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