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昭和30年代生まれに贈るオンラインマガジン
Updated 2009/02/21
眠れぬ夜
眠れない夜と雨の日には 忘れかけてた愛がよみがえる♪
70年代の読書メモ。
▼眠れぬ夜
作詞・作曲/小田和正/唄・オフコース
太陽がいっぱい/パトリシア・ハイスミス 1972年読了
アラン・ドロンの出世作『太陽がいっぱい』を知ったのは小学生の時だった。家にあったレコード付きの映画音楽全集本(LPレコード)の解説に惹かれたが、映画を観る機会はなかなか訪れず、中学生時代に角川文庫版を読んだ。

ニューヨークで定職につかずその日暮らしの青年トム・リプリー。ある日、富豪のハーバート・グリーンリーフに、イタリアへ行ったきりの道楽息子ディッキーを呼び戻すことを依頼される。

イタリア行きの一等船室チケットと当座の生活費を渡されたトムは、訪れた先で、ディッキーの贅沢でお洒落な生活を目の当たりにする。

如才ないトムはディッキーに気に入られ、訪問の目的を打ち明けたあとも居候生活を続けるが、気まぐれなディッキーは一時の刺激に飽きて、冷たい態度を見せ始める。

トムは鬱積した気持を秘めたまま、ディッキーとシーズンオフの観光地へ出かけ、二人きりのボートの上で殺人を犯す。髪を染め、旅券の写真を張り替えてディッキーになりすまし、財産を手にいれるが・・

この作品は「憧れの暮らしを手に入れる為に殺人を犯し、他人になりすます」と紹介される事が多いが、トムの動機はそんなに単純なものではない。

出自も学歴も雲泥の差の二人。しかし、トムは才能もセンスも自分のほうが上だと思っているフシがある。無いのは環境と名前、いわば社会的な「仮面」を持たない。皮肉にも二人の背格好と容貌は似ており、トムはモノマネも得意であった。

生まれながらに恵まれた者へ対する羨望、嫉妬。道化を演じる自分への嫌悪。ホモセクシュアルを疑われる屈辱。前半は殺人へ至るまでの心の動き、後半は一人二役を演じながら追っ手から逃れつつ、完全犯罪に王手をかけるまでのチェスゲームを緻密に描く。

原題は*『The Talented Mr. Ripley』。トムの才能を皮肉っている。顔のない器用貧乏な若者が仮面を手に入れるクライムストーリーだ。(*角川版のあとがきでは『才子リプリー君』と訳されている)

小説の中で読者は、実生活では被ることの出来ない仮面を手にすることが出来る。そして、何度でも被ってみたくなるのが『太陽がいっぱい』だ。


《余談》
小説にはアメリカン・エクスプレスという言葉が頻繁に出てくる。 国際電報と郵便の取り次ぎ、トラベラーズチェックの換金、手荷物預かりをしているらしいのだが、当時の私は何のことやら、さっぱり分からなかった。

この年、銀行のキャッシュカードが誕生したが、当時の中学生にはクレジットカードというボキャブラリーは無かった。
▼太陽がいっぱい/角川文庫('71初版)
太陽がいっぱい
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▼'50年代のアメックスカード
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▼眠れぬ夜・目次
トーマの心臓
アクロイド殺人事件
ガラスの仮面
白い本
ティファニーで朝食を
ペーパームーン
スターキング
太陽がいっぱい
ニーナの日記
セゾン・ド・ノンノ/パリ大地図帳
リーダーズダイジェストとフェーマススクールズ
成吉思汗の秘密
知的生産の技術
お楽しみはこれからだ
すてきなあなたに

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